2-3-3 Polypedilum グループ

(下唇板の中央歯が2または4本、触角は5節。) 
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     Polypedilum   Endochironomus   Phaenopsectra   Sergentia  Lipiniella
   Pedionomus    Nilothauma      Stenochironomus

  下唇板 副下唇板 大顎の
側歯
前大顎 上咽頭櫛歯 その他の特徴
Polypedilum
(多くに見れらるtype)
中央歯の中の1対は大きく、
外の歯は第1側歯より小さい。
下唇板は1枚のプレート
扇形、
左右は広く離れる
3裂 3ブロック、
各々が数歯
種類数が多く、種による変異が大きい
Polypedilum
(pedestere type)
中央の歯を中心に側歯を含め
て全体が順に小さい。
下唇板は1枚のプレート
扇形、
左右は広く離れる
3裂 3ブロック、
各々が数歯
 
Endochironomus 中央歯の中の1対は融合し、
わずかに切れ込む。歯は順に小さい。
中央歯と側歯は異なるプレートにある
横に細長い扇形
左右は広く離れる
2裂 3ブロック、
各々が3歯
 
Phaenopsectra 中央の2歯は外の歯より小さい、
第1側歯は小さい。
中央歯と側歯は異なるプレートにある
扇形、
左右は広く離れる
3裂 3ブロック、
中央が3、
左右が4歯
 
Sergentia 中央の4本の歯ははぼ等大。
中央歯と側歯は異なるプレートにある
扇形、
左右は広く離れる
2〜4裂 3ブロック、
各々が数歯
 
Lipiniella 中央歯は1本が先端で小さく
4本に分かれる。両側の歯は淡褐色。
下唇板は1枚のプレート
横に細長い扇形
左右歯中央で接する
4裂 不規則な1連の
約20本の鋸歯
第11体節に短い、1対の血鰓がある。
Pedionomus 中央の歯を中心に側歯を含めて
全体が順に小さい。
横に細長い扇形
左右は広く離れる
3裂 3ブロック
各々が3〜4歯
 
Nilothauma 中央歯は小さい4歯、側歯は6対 大きな扇型 小さい4本が
1ブロックにある
3裂 葉状の3枚 大顎の先端歯は大きく、淡黄色、
側歯は褐色
Stenochironomus 中央歯は2、側歯は4対。
浅いVj字型に配列。
痕跡的、
確認しづらい
3〜4裂 板状で、
先は数裂
大顎は全体が大きな三角形。
後擬脚は短く、肛門鰓は卵形、大きい


Polypedilum

本属は非常に多くの種類があり、したがって形態的にも多様である。手元に60種余りのサンプルがあるが、さらに整理する必要があると考える。
体色は淡橙色から深紅色まで。体長は5〜10mm。眼点は2対、2点が広く離れるものや接するものなど。

  
  下唇板は4本の中央歯と6対の側歯。中央歯の中の2本は大きく、外の2本は小さい(上図 左)が、
右図のように中央歯が最も大きく、外側に向かって順に小さいもの(P. pedestre type)もある。
副下唇板は扇形で中央歯広く離れるものがほとんどであるが、下図のように細長く、中央で重なる
ものもある。側歯が5対の種もある。
触角は5節。触角比は種によって異なる。Lauterborn器官は第2節先端にあるが、P.nubifer
タイプでは第2節、第3節の先端に各1個ある(上中図)。
P.kamotertium は頭部が洋ナシ型、触角の基節、
副下唇板、肛門鰓が十字型に開く 等々、他の
Polypedilumと異なった形態を有する。
最も多く見られる種では、
・ STは羽根型で先端の縁は毛状または
  櫛の歯状に縁取られる。
・ SUは先端部分が毛状に縁取られる。
・上咽頭櫛歯は3ブロックに分かれ、それぞ
  れが数本の櫛の歯状に分かれるものが
  多いが、種によって異なる。
・前大顎は先端で大きく2裂、と内側で1つ
  の膨らみがある。細かい毛におおわれ
  る。(左図)

右図の右から2番目はTripodura の触角
  Polypedilum の1種と見られるが、下唇板・副下唇板・大顎の形態が特異である。(池田湖産)

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Endochironomus

国内では釧路川で採取した1種のみである。

中央4歯のうち内側の2本は半ば融合、側歯は6対。
中央歯と側歯は異なるブロックに位置する。
副下唇板は長く、広がる。
STは三角形の羽根型で、先端はごく細かい
櫛の歯状。上唇膜は広い傘状。上咽頭櫛歯は
3ブロック、それぞれが尖った3歯(右図)。
 5節。本サンプル個体の触角比
 は1.6.
 

・本サンプルは釧路川の平瀬、石礫
 底より採取した。
・体長10〜11mm赤紅色。眼点2対
 はわずかに離れる。
・大顎の背歯は小さく黄褐色。側歯
 は3本。指状突起は細長く、鋭い。
・肛門鰓は2対ともに卵形。
・尾剛毛台は低く、尾剛毛は8本。

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Phaenopsectra

本種は琵琶湖・天野川河口の礫底より採取した。

 
中央の4歯と側歯とは異なるプレートに位置する。中央歯の中の1対は外の歯より小さい。側歯は6対、第1側歯は小さい。副下唇板は扇形、放射状の線は鮮明。 側歯は3本。指状突起は細く鋭い。  
・体長7〜8mm.
・触角は5節、本サンプルの触角比は1.1  〜1.2。特記すべき特徴は見られない。
・STは羽根型で先端は10余本の
 櫛の歯状。SUは長く、先端は櫛
 の歯状。
・上咽頭櫛歯は3ブロックに分かれ
 中央歯3、左右は4歯に分かれる
・前大顎は3歯。
・尾剛毛台は低く、尾剛毛は8本。
Sergentiaとの相違点
Phaenopsectra Sergentia
下唇板の中央歯 中の2歯が小さい 4歯ほぼ等大
大顎の側歯 3本 4本
前大顎 3歯 2〜4歯


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Sergentia

国内では広く分布し、4種の幼虫を確認している。

中央の4歯はほぼ等大、側歯とは異なるブロックに位置する。側歯は6対。 触角は5対、特記する特徴はない。大顎は4側歯、前者Phaenopsectra の3歯と異なる。 本属はPhaenopsectra とよく似た形態的特徴をもつが、下唇板、大顎に差異が認められる。前大顎は2〜4歯。

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Lipiniella moderata

琵琶湖北湖南部の東岸の湖岸、泥底に生息。琵琶湖に流入する野洲川でも採取された。


体長4.5〜5mm。淡橙色。前擬脚は大きく、頭と同じくらい。 中央歯は小さな4つに分かれ外側の歯は淡褐色、内側の歯は黒褐色。側歯は6対。副下唇板は細長く左右に伸び、中央で接する。 背歯は小さく、黄褐色。先端歯は大きく、側歯は3。
背面の縁は大きな膨らみになる。触角は5節。
STは羽根状で、粗大な鋸歯。SUは太い針状。上唇膜は広い傘状。上咽頭櫛歯は約20本の不規則な鋸歯状。 第11体節に1対の血鰓がある。尾剛毛は7本。  


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Pedionomus

姫沼(北海道利尻島)、釧路川等で採取。
国内では2,3種あると考えられる。

中央の2歯は他の側歯に比べてやや大きく、側歯は7対、
順に小さい。副下唇板は横に細長い扇型で放射状の線は
明瞭でない。
  触角は5節。触角比は1.3〜1.5。 ST(上の写真では不明)は羽根型で粗大な櫛の歯状。SUは太く長い針状、細い毛に縁取られるものもある。
上咽頭櫛歯は3ブロックに分かれそれぞれは3〜5歯。
前大顎は3歯。
体長5〜8mm。淡紅色〜暗赤色。
眼点2対は接近。尾剛毛は8本。
 

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Nilothauma

国内では阿寒オンネトー沼、野洲川(滋賀県)河口で採取したが形態的に若干異なる点がある。そのほか数河川で採取した。

中央歯は小さい4本。側歯は6対。副下唇板は大きな
扇型で放射状の線は基部のほうで鮮明。
触角の第3節は第4節より短い。Lauterborn器官はなく、第2節先端の
指状突起は長い。
先端歯は特に長く、鋭く曲がる。
淡黄色。側歯は小さい4本、褐色。
背歯はない。
・体長4〜5mm。淡橙色。頭部は淡
 黄色。眼点は2対。
・STの先端は3〜5歯。SUは太く、
 長い針状。上唇膜はエプロン状で
 先端は細かい櫛の歯状。
・上咽頭櫛歯は葉状の3葉。前大顎
 は3裂。
・肛門鰓は長円錐形の2対。
・尾剛毛台は低く、尾剛毛は7〜8本。

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Stenochironomus

国内ではかなり広い範囲に分布していると考えられる。少なくとも2種があるように見られる。
清冽な水域の落葉が堆積した淀みに生息。

10歯が浅いU字型に配列、最も外側の歯は低く、
小さい。副下唇板は見られないが痕跡的な部分が
見られる。
触角は5節。第2節先端のLauterborn器官はないが、指状突起がある。付属枝は第3節中ほどまで(短い)。触角比は種によって異なる。 三角形で上半分は黒褐色。背歯は大きく、先端歯と2側歯の間に重なるように位置する。(下図参照)
肛門鰓は後擬脚より大きいバルーン状。後擬脚は短く、第12体節の下部に位置する。 体長7〜8mm。淡橙色。眼点は小さい2対、離れる。頭部は扁平、四角形。体長の20〜25分の1。第1胸節を除いて体節全体が細く、腹部の直径は体長の1/20.後擬脚は第12体節の下方に位置する。肛門鰓は大きなバルーン上で、体軸にそって後方をむく。 ST、SUともに数本の粗い鋸歯。上唇膜は2葉、薄い膜で、先端は3〜4の粗大な鋸歯。前大顎は3〜4歯。 尾剛毛は短い7本。

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